ゲロに振り回される
1月1日の話を今更だが書く。
友人と初詣に行き、その後飲酒をした。
帰宅しようと山手線に乗ったのだが、そこには誰かが置いて行ったゲロがあった。
うわあ、と思いながらそこを避けて席につく。
終電も近かったが、幸いに乗客は少なく、いい感じにそこだけぽっかりと空間が出来ていた。
私は昔からとにかく正義感が強い。故に損なこともしばしばあった。
考える。
あのゲロは、いつから乗ってらっしゃるのだろう。山手線って恐らく終点という概念がなくて、ぐるぐる回るよな?
ということは、
・誰かがわざわざ駅員さんに報告しに行く
・駅員さんがたまたま発見する
といういずれかのイベントが発生しない限り、あのゲロはひたすら大都会東京を回り続けるのであろう。
私は即座にグーグル博士を頼った。
「電車 ゲロ 見つけた」
博士はこんな助言をくれた。
「ゲロの処理はおがくずで行います。」
いやいや、今知りたいのはそこじゃない。こちとら酒も入っているというのに、おがくずというインパクトのある4文字で残り僅かな脳内処理能力を消費させないでくれ。
続いてこんなことも教えてくれた。
「ゲロがあるという報告を駅員が既に受けていた場合、次の駅もしくは終点に清掃員を待機させて清掃を行うことがある」
ああ、それそれ、なるほど、そういう可能性もあるのね。
ということは、ゲロが乗ってらっしゃるという情報を駅員さんが既に得ていた場合、分刻みで近い将来、清掃員さんが見事な腕さばきでブツをかっさらって行くかもしれないのか。それなら、少し待とう。そう思った私は、みんな既にゲロのことなんか気にしていない中、ひとり緊張し椅子に座っていた。
新宿を過ぎる。来ない。
新大久保、高田馬場、目白…
池袋に着いてしまう。私はもう間も無く降りねばならない。急に焦りが出て来た。
もし次で私と入れ違いに清掃員さんが来なかったら…?
目の前のドアから降りたとしても、駅員さんがどこに配置されているか私には分からない。確実なのは先頭車両だが、人混みを掻き分け降りて、かなり早めの速度で歩いて命からがら先頭を目指したとしても、恐らく私が「ゲロが…!」と言うより先に発車ベルが鳴るであろう。となるとやはりホームに居る駅員さんを探すしかない。そして先ほど発車した山手線外回り電車の◯号車中程にゲロがありまして、と説明して、ああして、こうして……………
だめだ!!!!!
考えすぎて気分が悪くなって来た。私が吐きそうだ。人のゲロどころじゃない。
その時の私は、焦りから白目など剥きながら、もしかすると汗も垂れていたかもしれない。知らないけど。
池袋に着いた。私は一目散にトイレを目指した。
結局、冷静になった頃にはもう何本前の山手線になったかも分からず、私は微量の罪悪感を抱えながら帰路に着いた。
あのゲロはちゃんとおがくずで処理してもらえたのかな。正解かつ一番スマートなのはどんな行動だったのだろう。あの日以来、そんなことを考える毎日だ。
あけましておめでとう。