眉毛を見ていた

友人より、「僕の同僚に、絶対にお前のタイプの男がいる。絶対にだ。」といった申告を受けた。


恋人居ない歴半年。そろそろ頑張りたいと思っていたタイミングだった(何を頑張るべきかはよく分かっていない)。


「今すぐ写真を見せやがれ」
私は答える。


写真を見る。
120点の爽やか笑顔を見せ、キッチンに立つ青年がそこにいた。


もはや脊髄反射的に
「タイプだ!!!!!!!」
と唱えた。


友人は続ける。
「何がアレかって、性格も絶対お前好みなんだよ。歳は2つ上。落ち着いていて、賢くて、仕事ができる。でも嫌味はない。しかも音楽好『紹介しろ!!!!!!』

食い気味で叫んだ。



そういった経緯の後、つい先日、爽やか青年と2人で飲んで来た。

友人の紹介、ってパターンがそもそも初めてだったのだが、これは少し難しいなと思った。
普通の感覚ならば始めは3人ないしそれ以上で会うのがセオリーのような気もするが、なんせ友人は小学校からの幼馴染。私の黒歴史から過去の恋愛、性癖まで全てを知っている人物の前で、いわゆる"女の部分"をさらけ出すのはどうにも恥ずかし死、である。

といった理由により、初っ端から2人で会うこととなった。ちなみにお相手は困惑していた。それが正しい。


場所は品川。
私がお誘いしたので、お店の予約やらは全て私が行った。

先に店に着く。トイレに寄って、鼻毛が出ていないかをチェックした。

彼がやってくる。写真で見た通りの、爽やかな笑顔を引っ提げて。

初めまして。そんな会話をして、生ビールを2つ頼み、乾杯した。



彼は写真の通りのサワヤカ好青年だった。

お互いの話を色々とした。
故郷の話、家族の話、趣味の話。

特に音楽の話をしている時と、私が麻雀を打てると知った時の彼はとても嬉しそうだった。



好感触だ。



趣味も合う、聞いていた通り賢くて、落ち着いたトーンで話す。そして素敵すぎるハニカミ笑顔。顔も髪型もすこぶるタイプだ。


彼に恋してもいいな、と思っている私がいる。肌感だが、彼もそう思っているように感じた。





だが。

どうも一点だけ気になるポイントがある。


それが、眉毛なのだ。眉毛の形が、ほんの少しばかり目に留まってしまった。

めちゃくちゃ細いとか、インド人ばりに手入れされてない眉毛といったわけではないのだが、こう、言葉で形容し難い不思議さがあるのだ。

"それ"に気付いてからは、もう無意識にずっとそこばかりを見ていた気がする。

マイナス要素として捉える程ではない。しかし、顔を見る度に目に留まってしまう。ダメだダメだ。見るな私。






気が付けば4時間も経っていた。終電より少し前に、お開きとなった。

ありがとうございました、といったメッセージのやり取りをし、その日は終わった。







それから少し間が空いて、先日久しぶりに連絡をしてみた。

すると、なんだか素っ気ないとも取れるような返事が返ってきてしまった。こうなると私はもうダメだ。




彼は、私が猛烈に眉毛を見ていることに気付いてしまったのだろうか。
それとも、ほかに何かダメなところがあったのだろうか。

それはもう、今となっては知る術もない。