米騒動

仕事で酒の工場に行った。

あのミチミチする帽子を装着し、工場内に一歩足を踏み入れると、ぶわっと米の匂いに包まれた。優しくて、暖かい、そしてとてつもなく巨大で、おかしくなりそうな程に良い芳りだった。たぶん、羊水の中に浮かぶ赤ん坊ってこんな感じなんじゃないかな。それ程えらく心地が良かった。


我輩はダイエット中である。
この樽のような身体を少しでも改善すべく、何となく耳に入って来た情報で何となく糖質を避けている。炭水化物、特に米は、最近ではほとんど食べていない。


工場の見学を終え、家に帰ってすぐに米を炊いた。そしてめちゃめちゃに食べた。それはもう、これまでの努力がおチャラになるほどに。
米と好物の明太子をツマミに、お土産で頂いた酒がどんどん空いた。



抗えない。
米の圧倒的権力の前では何一つ抗えない。無抵抗な人間になる。素っ裸だ。為すすべがない。


酔いの回っていく頭でひたすら唱えた。
米、法律で禁止してくれ。